心不全は、心臓が何らかの原因で、体全体に十分な血液を送ることができなくなった状態をいいます。酸素や栄養を体の臓器に供給できなくなるため、さまざまな症状や合併症を引き起こします。また血液の流れが滞ることで、臓器に水が貯まるようになり、こちらもさまざまな症状を引き起こします。
心不全には様々な分類方法がありますが、ここでは症状の出方による分類をご紹介します。数時間〜1日で症状が悪化するものを急性心不全、月〜年単位で悪化するものを慢性心不全といいます。実際は心不全は風邪のように「治る」ケースは少なく、一度急性心不全を起こすと心臓に障害が残って慢性心不全となり、感染症などをきっかけに急激に悪くなって(慢性心不全の急性増悪)、以後階段状に悪化していってしまいます。
心不全の原因は多岐にわたりますが、主なものは以下のようなものがあります。
心不全の一般的な症状は以下の通りです。急性心不全ではこれらの症状が急激に出現し、慢性心不全ではじわじわと出現し、病気が進行すれば症状の程度が強くなります。心不全の原因によっては、追加の症状(例えば心筋梗塞であれば胸の痛み)がでることになります。
運動時や横になると悪化します。重症化するとじっとしていても息切れが生じます。
心臓のポンプとしての機能が低下するため、全身の組織に十分な酸素が供給されず、疲労感が生じます。
足や顔にむくみが見られます。血液の流れが滞ることによって体内に水分が滞留するためです。
むくみによる水分の貯留が原因で体重が増加します。
肺に水分がたまると咳や喘鳴が生じます。
症状に加え、以下のような検査を組み合わせて、心不全の状態や原因を探っていきます。
心不全の治療は、急性心不全と慢性心不全で方針が変わります。
まず血圧が高い場合は硝酸薬などを使って血圧を低下させます。肺に水が溜まり呼吸の状態が悪い時はNPPVという特殊なマスクを使用し、症状を緩和させます。また体内に水が溜まっている場合は利尿薬の注射を行い、体外へ水分を出していきます。血圧が低い場合は強心薬を使い、血圧を維持させます。心臓へのダメージが大きく血圧が維持できない時は、心肺補助装置などを使い集中治療室で治療されることになります。
同時並行で心不全の原因をしらべ、心筋梗塞がある場合は緊急で心臓カテーテル検査などが行われます。
一旦急性心不全の治療が落ち着いたあと、あるいは緩やかに心臓の機能が落ちていっているような時は、進行の予防や慢性心不全の急性増悪を防ぐための治療を行います。
薬物療法ではACE阻害薬、ARB、β遮断薬、アルドステロン拮抗薬、SGLT2阻害薬などが使用されます。これらの薬物は、心臓の負担を軽減させ、心臓の機能の悪化を防ぎます。これらの薬を利用しても体に水が溜まりがちな場合は利尿薬を併用することもあります。
生活習慣の改善も重要です。塩分の摂取制限、体重管理、適度な運動、禁煙、アルコールの摂取制限などが行われます。