気管支喘息は、何らかの原因で気管に慢性的な炎症がおこり、刺激に対して過敏に反応しやすくなる病気です。風邪のウイルスや冷たい空気、アレルゲン(アレルギーの原因物質)などの刺激が加わると、気管が急激に狭くなり、息苦しさ、咳、喘鳴(ゼエゼエやヒューヒューといった呼吸)および胸の圧迫感など、喘息発作とよばれる症状を引き起こします。
かつて喘息は命に関わる大病でしたが、治療の発展により死亡率は大幅に減少しました。しかし依然として重症喘息の方はおられ、喘息発作を繰り返し亡くなられる方が一定数おられます。近年は高齢になられてから発症する方や、成人後に再発する方もおられ、「喘息は子供の病気」という認識により、発見が遅れてしまうことが問題視されています。
気管支喘息の主な症状には次のようなものがあります。
特に夜間や早朝に呼吸が苦しくなることが多いです。
呼吸時に「ゼエゼエ」や「ヒューヒュー」という音が聞こえます。
特に夜間や早朝に悪化することが多いです。
胸が締め付けられるような感覚が生じます。
普段はこれらの症状が軽くても、何らかの刺激が加わるとそれぞれの症状が強くなり、喘息発作と呼ばれる状態になります。症状は時間とともに一時的に改善することもありますが、完全に治るわけではなく、再発を繰り返します。発作を繰り返すほど、気管に炎症の痕が残るようになり(気管リモデリング)、発作の症状が強くなったり、治療薬を使っても症状が改善しにくくなります。
また咳だけが目立つ咳喘息という病気もあり、気管支喘息の亜型と考えられています。咳喘息のうち30%の方が気管支喘息に移行すると言われており、注意が必要です。
気管支喘息が発病する原因はまだ完全には解明されていませんが、気道の敏感さやアレルギーなどの遺伝的要因と、大気汚染やアレルゲンによる環境要因の組み合わせが関与していると考えられています。
喘息発作を引き起こす原因には次のようなものがあります。
気管支喘息の診断は、主に症状やこれまでの経過、家族歴をもとに行われます。より正確に診断するために以下のような検を組み合わせて総合的に判断されます。
気管支喘息にはまだ根治治療が見つかっていません。発作の予防と発作時の対応の2つが主な治療になります。
発作の予防には吸入ステロイドを用い、気管の炎症を抑えることが一番重要になります。飲み薬のステロイドと異なり、吸入ステロイドはほとんど全身に吸収されず、強い副作用はほぼ起こりません。吸入ステロイドのみで喘息の症状が抑えられないときは、段階的にステロイドの量を増やし、長時間作用型β2刺激薬という気管を広げる薬を併用していくことになります。最近ではステロイド吸入薬と長時間作用型β2刺激薬が一緒になった吸入薬がよく使用されます。
喘息発作時には短時間作用型β2刺激薬という、即効性のある気管支拡張薬を使用します。短時間作用型β2刺激薬を用いても症状が改善しない場合は、飲み薬のステロイドを数日だけ使用します(飲み薬のステロイドをあらかじめ準備しておくかは、かかりつけ医との相談になります)。これらの薬を用いても発作が収まらないときは、病院を受診しステロイドの点滴治療などを受ける必要があります。
喘息の治療は自己判断で中断しないことが重要です。症状が軽くなっても、気管では小さな炎症が起こり続けており、少しずつ症状が進行し、突然発作がおこります。前述の通り、発作を起こせば起こすほど気管自体が変形していき、薬が効かなくなります。症状が改善し、薬を減らすとしても、医師と相談しながら治療方針を決めることが重要です。